【5年前の結末】奪われたあの財布と見せつけられた驚きのエイジングの話



壊れない!──そんな理想の財布を求めて、革と向き合い続けている。やはり、財布の生命線は“革そのもの”にあります。糸は手縫いのためほつれなども無い。まだまだ使える状態ではあるものの、その前に驚くほど劇的な経年変化を遂げてしまうのもまた革の魅力。下に敷いている革が、元の姿です。マメな兄が手入れをしていたこともあり、変化はありながらも深い味わいが宿っています。

そんな兄は、私の持ち物をこっそり持ち出してはボロボロにして返してくる常習犯ですが──今回の財布は、どうやらそう簡単にはいかないようです。 分かってはいる、知ってはいるもののその事実が、私にとって大きな自信となりました。



経年変化の話


経年変化──あるいは経年劣化とも言われるが、私はそれを革の不思議な魅力のひとつだと感じている。“劣化”という言葉が使われるにもかかわらず、革は時を重ねるほどに新たな深みを見せてくれる。
まるで再生していくような、奥行きが増していくような。そんな表現がしっくりくる素材だ。

ただし、どんな革でも良いというわけではない。私がこの革を選んで使い続けているのには理由がある。タンニン鞣し──いわゆるピットヌメ。
「そこまで変わらない」と言う人もいるが、私にとってはまったくの別物で、この革の大きな違いこそが魅力だと感じている。

最初はあまりにも硬く、扱いにくさを覚えるほど。しかし使い込むほど味わいが増し、手に馴染んでいく。その感覚が、たまらなく好きだ。 どんな革を使うかは、最終的にはオーナー次第。だが、この革はすでに入手不可能になってしまった。 レザークラフトの難しさは、価格の高騰だけでなく、こうして“二度と手に入らない革”があることにもある。



手入れの話を聞いてみた話



ズボラな私だからこそ、実のところ革財布の手入れは“しなくてもいい”と思っている。しかし、例の持っていかれた財布──せっかくなので、どんな手入れをしていたのか聞いてみた。 どうやら彼は、毎週土曜日に手入れをしていたらしい。 「土曜日」というのが本人なりのこだわりらしいが、正直その理由はよくわからない。おそらく、毎日手入れするようなものではない、という意味なのだろう。

使っていたのは、クリーナーとリキッドオイル。聞けば聞くほど、ずいぶん可愛がられていたようだ。

それにしても、この革は私が扱ってきた中でも最も硬い部類に入る。そう簡単にはへこたれない。レザーそのものはまったく問題なさそうだ。



まとめ


レザークラフトって、つくづく面白い。
思いどおりにならない子ほど、あれこれ考えるし、その分だけ成長していく姿を見るのが楽しい

手入れ次第で反応も大きく変わるし、まるで自分の子どもを育てるような感覚がある。
大事にすれば、それに応えるように──いろんな意味で返してくれる。

あなたは、革を“厳しく育てる派”?
それとも“甘やかして育てる派”?
それとも、まったく別の育て方をするタイプだろうか。


そんじゃーね!